恒例のげん担ぎ

さて初日が無事に開けました。
ということでレポート遅くなりましたが、幕開け前の儀式、『トンカツを食す』です。
今回は阿佐ヶ谷にある『かつ久』です。

酒処とあるようにメニューを見ると旨そうなネーミングのツマミもありました。
『各種会合承ります』という表記が粋です。
これが『各種宴会承ります』だと、何だか投げっぱなし感があって、トンカツより酒かよ…と思ってしまい、トンカツに対しての侮辱と捉えてしまうところですが、『会合』と明記して頂きました。
これはむしろトンカツにたいして非常にリスペクとしていると考えられます。
なぜなら人と人の繋がり、その会話に花を添える代表的な食事に、トンカツが選ばれたという事だからです。
もう懐石料理と同レベルじゃないかと思われます。
「おう、佐藤さん。今度、町内会の後どこかで食事でもしねぇかい?」
「いいやねぇ。けど町長もいるから、あんまり不細工なところにも行けねぇしな。鈴木さんどこかアテはあるかね?」
「おう、じゃぁ『かつ久』はどうだい?」
「『かつ久』って言ったら、とんかつかい?」
「おう、とんかつだ。ダメかね?」
「いや、良いんじゃぁねぇかな。ついでに酒ものめるしな。とんかつ屋さんを会合に持ってくるたぁ、流石、鈴木さん。盲点だったぜ」
「とんかつ食って、ちょいと酒呑んで。粋だろ?」
「しかしもし町長がとんかつ嫌いだったらどうするんでぇぃ?」
「そんときゃ解散総選挙だな」
「なるほど。そいつはいいや」(アハハハハ)
という一連がとんかつを軸にして語られることでしょう。
素晴しい!
下記のようにメニューも何種類かあるので町長さんもきっと喜ぶに違いない。

個人的にはロースとヒレだけでおもてなしをお願いしたいところです。
しかし阿佐ヶ谷という土地柄、じじばばお子様も多く住まわれている地域なので、町に愛されるとんかつ屋さんとしては海老フライやクリームコロッケもご用意するのは致し方ないのでしょう。
『会合』も開かなければなりませんし。
きっとかつ久の主人もメニュー作りには何か断腸の思いがあったはずです。

とまぁ、店の看板を前にひとしきり妄想して、さっそく暖簾をくぐってみました。
すると妄想ではなく、なんと本当に会合が開かれていまして、なかなか下世話な会話を楽しむ事が出来ました。
私はカウンターに座ってとんかつが揚がるのを待ちながら、テーブル席の会話に耳をそばだてていると「あそこの息子はバカ息子だな」とか「あそこの家は嫁と姑の仲が悪いから」とか、挙げ句のはてには「あそこの主人は刑務所帰りだから」とか…。
何とまぁ〜絵に描いたような昼ドラのドロッとした話題で持ちきり。
自分の田舎のご近所のような怖さが垣間見えて、これぞ町内という感じがしました。
しかし日本における共同体の図をとんかつ屋さんで体験するとは…。
店主は「こんな下世話な話はもう慣れたもんよ」とでも言うように黙々ととんかつを揚げてまして、その姿が粋でたまらなかった。
一番ドキドキハラハラしていたのは新人アルバイトの女の子だったと思います。
全く関係ないけど、とんかつやさんでバイトをする女の子はなぜかピュアに見えるものです。

あっ!肝心のとんかつについてのレポートですが、もちろん美味しかったです。
下味がしっかりついているので、ソースをつけないでも十分いけます。
お値段も1,000円ほどの定食です。
肉の質をワンランク上げれば1,500円くらいでしょうか。
でも1,000円定食でも十分です。
そしてキャベツの千切りも、僕の大好きな薄々千切りでした。
汁は豚汁ではありませんでした。

寡黙な店主も「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の時は爽やかでした。
やはりとんかつ屋さんは一人で行くに限りますな。
必ず一対一で店主と挨拶が出来るので、とんかつを通して「ごちそうさま」「ありがとうございました」の交わし合いに、なんだか男同士の契りができるのです。
「良い腕見させてもらったよ。やっぱりとんかつは俺を裏切らないね」=「ごちそうさま」
「だろ?あんたも味の分かるお客さんで良かったよ。寂しくなったらまた来な。とんかつは決してお前を裏切らないぜ」=「ありがとうござしました」
みたいなやりとりが暖簾を出るまでの間に行われるのですよ。
女性客の場合なわかりませんが…。

ってことで、何のこっちゃとんかつレポート終了。

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